『ありきたりな話をしよう。』
目が覚めた時、もし僕が。今の僕のままの記憶を持って、少年の時分に遡っていたら。僕は記憶を辿り、今と同じ人生を探るだろう。
現在僕は、後悔ばかりしている。あの時に戻れたら、きっとああするだろう。もしやり直せるなら、絶対にあんな事はしない。あいつにさえ出会わなければ。彼女に振り回されなければ。振り返れば、限りなく。けれど僕は、同じ未来を選択するのだ。正しい事を見落とし、間違った選択をする。傷つけあう未来の相手と笑い、いずれ僕を陥れる女性のわがままに付き合う。
ありきたりな話をしよう。呆れないで聞いておくれ。
それはすべて、君に出会うためなんだ。
過去に戻りたいと願うたび。やり直したいと思うたび。君を失うことが、恐ろしくてたまらない。
君と出会った偶然が。君と笑った時間が。君と見た景色が。君と語った人生が。なくなってしまったら。
僕はいない。




06.1.14