『OVERSET』
何も考えずに眠ろうとしたんだ。元来ごちゃごちゃと考えるのは性に合わない。しかし、自分で蒔いた種が芽を出し花を咲かせる時を思うと。
簡単に言えば、痛い。そして、イタイ。


綺麗な言葉で飾るのは可能。難しい事じゃない。ただ私は、そういった語彙を叩き込まれていないし、そういった事を恥ずかしげもなくさらけ出すような思考や勇気を持ち合わせていない。
あえて言うならば、胸が痛い。私は、イタイ。


それなのに、君の声があまりにも明るくて、きっと間違ってはいなかったのだと改めて思い込む。言いかけた本音を飲み込んで、明日もきっと笑うんだろう。
君が幸せになるのなら、私は。私を犠牲にする事も厭わない。そう、言いながら笑うのだ。


痛覚を刺激し続けるのは私自身であって君ではない。ましてや彼でもない。
考えてもどうにもならない。
始まりの封を開けたのは私で、規制するブレーキを設けたのも私で、そのスイッチを押すのを躊躇ったのも私で、今更になって息を詰まらせているのも私だ。


先手を打ちたかったんだ。君に加担するように見せかけて私は、硬いシェルターの中へ帰りたかっただけなんだ。
煙草の火種を手のひらで握り、解放されそうな水門を焼きつぶす。
決めたじゃないか、あの時。私はそれでいいのだと、決めたじゃないか。
一人で生きて、一人で死んでやる。遠まわしに言えば、そんな感じ。




05.11.8