『OVERTURE』
どんな結果が待っていたとしても、僕は僕を恨むだろう。憎むだろう。
こんな始まり、あり得ないんだ絶対。してはいけなかった。わかってる、わかっているよ。
でもお願いだ、理解しておくれ。今の僕には、そうしなければ笑えなかったんだ。彼女に微笑みかける事が、出来なかったんだ。
出来ていたとしてもそれは自嘲。
進行した虫歯のように、左胸が痛む。何か悪いものでも喰ったんじゃないかって、喉に指を突っ込んでみても。どうしてもできないんだ、理解しておくれ。
輝いているとか煌いているとか、そんな透明なものではない。見えない場所に行きたい気持ちとそれはとても似ているんだ。
怖いだなんて単純なものでもない。
声が聞こえるだけでも充血する思い。近づくだけで竦む足、重い。
だから今はただ願うよ。
彼女に幸せが訪れますように。
そしてそれは、僕がもたらすものではありませんように。




05.11.6