鼻歌の隙間から、バターの焼ける匂い。
君がキッチンにいるあいだ、横になってビールを飲むアンニュイ。


はやくここへ来て、横に座って。


黙って隣にいるだけで。
僕のグチに頷きもせず、否定もせず。
抱きしめる安心感。
ただいるだけで、笑っているだけで。


けれど君は。


すれ違う冷たさ。
近づきすぎな横顔。
仕草を追う目。
見せなくなった笑顔。


隣にいるのは。


君の匂い。
君の声も。
僕のもの。


君の乳房。
君の髪も。
君のキス。
君の手も。
今はまだ、僕のもの。




07.5.11