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  サイレン
何かに呼ばれているような気がして
誰かが叫んでるような気がして
あたりを見渡してみたけれど
そこには何も見あたらない
背後から迫ってくる気配を
振動で感じながら
鉄鋼所の休憩の知らせを右耳で聞いた
左では相変わらず
栗鼠が囁いている
悪態をつくような
舌打ちが風の音に消える
思い出さなければならないことが
あったのは覚えているのだが
それが何なのか
さがしあてることから
はじめなければ
ならないようだ
遠くの煙突が煙を吐く
浄化した言葉を汚す
屁理屈を並べて何とか
ここまではやってきた
翻して
正当化して
加担して
歪ませて
それなのになぜか
鼓膜を揺らすあの音だけは
貫くように
急かすように
諭すように
優しいようで
噛みつくように
教えてくれた
逃げられはしないのだと
追い越してはいかないのだと
積み重なる過去が
胸のざわめきに形を変えて
私の肩を叩いて
そこに留まれと
呟くのだ
振り切る強さは手に入れたから
あとはそう
歩みを進めるには
どうしたらいいのかと
問いかけてはみたのだが
そこまでは
答えてくれないようだ
突風で木から落ちる
青い葉は生き物のように
ゆっくりと舞うそれを
つかまえようと手をのばしたけれど
私が掴んだのは
虫食いだらけで
また
前を向いて歩き出すのだ
この胸を打ち抜かれても
目指すものは
必要な場所は
見えてはいないけれど
そんなものはなくてもかまわない
生きる時も
死ぬ時も
手に入れることなど
できないのだから
所有物には
できないのだから
そう
だから誰だって
孤立していないが
孤独なんだと
いまさら言うことでも
ないのだろうけれど
あの音が私に教えてくれたように
まっすぐ見つめてくれたように
私もまっすぐ
誰かを見つめたいのだ
その肩を
叩く時がきたとしても




05.11.14